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ADR-0016: 企画の評価を6観点として既存の企画書へ載せ、期待効果の単一金額を求めない

採用(2026-08-06)

企画フェーズで評価すべきリスクには、経営観点・市場性・なぜ自社がそれをやるのかという根源的な問い・投資家への説明性が含まれる。しかしフェーズ4の整備では、例示された規格名(ISO 12100)の方へ主旨が移り、成果物は AIエージェントの安全リスクアセスメント(テンプレ9)になった。テンプレ9 は妥当な成果物だが、企画フェーズの評価は規定されないまま残った。

既存の器を棚卸ししたところ、欠落は限定的であった。

観点 既存の器
受益者と価値 テンプレ6「目的と価値仮説」(測れない表現の禁止つき)
投資対効果 テンプレ6「投資対効果」、G-1 基準1
リスクと受容 テンプレ6「リスクと受容方針」、G-1 基準2
中止の判断 第7章 7.7.3 の必達基準5項目・評点基準5観点
戦略整合 7.7.3 の評点基準にはあるが、G-1 とテンプレ6 にはない
自社が勝てる理由 どこにもない

すなわち **「案件を始める理由を書く場所がないまま、続ける理由だけを問う」**構成になっていた。

調査により、次も確認した。

  • 事業投資の実務では、初期の選別に財務基準を置かない構成が採られている。財務手法に依拠したポートフォリオ管理は成果が最も低いという調査結果がある
  • 交通インフラ 210 件の需要予測では、鉄道案件の10件中9件で需要が過大に予測され、過大の平均は 106%。30年を通じて予測は正確になっていない
  • 本標準は既に「記述の質を機械的に判定して承認可否を決めない」と規定しており、機械が検査してよいのは形式的な欠落である
  1. 新規のテンプレートおよびゲートを作らない。変更はテンプレ6 の欄、G-1 の確認方法、7.7.3 からの参照の3か所に限る
  2. 企画で評価する観点を6つとする。戦略整合 / 自社が勝てる理由 / 受益者と価値 / 投資対効果 / 事業リスクと受容 / 中止条件
  3. 観点1と2をテンプレ6 へ新設する。開始の判断で問われていなかった項目を、開始の側へ揃える
  4. 因果の物語を書かせない。戦略目標から効果までの連鎖を記述させる方式は、検証されない前提の作文になる。書かせるのは対応する戦略目標の識別と、対応が成立しなくなる条件である
  5. 中止条件を企画の時点で書かせる。7.7.3 の必達基準を当該の案件の言葉へ具体化する。起案者だけで決めず、事業決裁者との合議とする
  6. 期待効果の単一の年額を求めない。義務づけるのは算定根拠・参照した過去案件・効果が出ない条件の3点とし、効果は短期と長期に分ける
  7. 事業リスクと安全リスクを分離する。保護する対象が異なり、上振れの扱いも異なる。1つの表に混ぜない
  8. 企画側では規格名を引用しない。「リスクアセスメント」という呼称を用いず、「事業リスクの特定と受容方針」とする
  9. 新しい記号を作らない。リスクの分類は記号ではなく表の値(語)として持つ
  10. 観点1または2が空欄である企画書は、投資対効果の判定へ進まない。欄の空白は機械的に検査し、記述の内容は機械が判定しない
  • 新規の「事業リスクアセスメント表」を作る — 観点は整理しやすいが、テンプレ6 と記載内容が重複する。判定の総数を増やさない原則に反する
  • G-1 の判定基準に5項目目(戦略整合)を追加する — 明快だが、既存の基準1(投資対効果)および基準2(リスク受容)と判定対象が重なる。基準の個数を保ち、確認方法を具体化するほうが影響は小さい
  • ISO 31000 を企画側の参照規格として引用する — 構造は同型だが、規格本文を確認できておらず、原則の個数さえ解説間で揺れる。この状態で規格名を引用すると、ADR-0011 が避けた誤った適合の主張を企画側で再現する
  • 事業リスクと安全リスクを1つの表へ統合する — 表は1つで済むが、危害の深刻度の尺度と事業影響を同じ列で扱うことになり、どちらの判定も鈍る。また ISO 31000 が上振れを含むのに対し ISO 12100 は含まないため、統合するとテンプレ9 に機会を書く余地が生まれ、SR4 の判定が緩む
  • 期待効果に単一の年額を求め続ける — 突合は容易だが、書き手が数字を作る。作られた数字を判定基準に据えると、数字を作る能力が承認の通過条件になる
  • 事業リスクの分類へ記号を割り当てる — 参照は容易だが、想定した候補がいずれも既存記号と衝突する(B-1〜B-4 会議体、R1〜R3 リスク区分、EN-1〜EN-3、SR1〜SR4、G-1〜G-8)
  • テンプレ6 を全面的に書き換えた。欄が5つから9つへ増える。記載量は増えるが、様式とゲートの数は増えていない
  • G-1 の判定基準1・2の確認方法を具体化した。基準の文言と個数は変えていない
  • 7.7.3 に、必達基準を企画時に具体化する旨を追記した
  • リスク表に「区分」と「顕在化しうる時期」の2列を追加した。上場企業の年次開示で求められる「事業等のリスク」の記載事項と対応が取れる形にした
  • リスクの区分の初期値6種(戦略・財務・運用・法務規制・レピュテーション・AI固有)に標準文書の裏づけはない。初期値であり組織が変更できる
  • 決定6 により、既存の企画書の様式との差分が生じる。移行の扱いは各組織の判断とする
  • 企画フェーズの実施策をフェーズ5へ置く構成も検討したが、本 ADR は第6章へ記述の指示と手順を置いた。フェーズ5は道具の設定と組織移行を扱う構成(ADR-0013)であり、様式に付随する記述の指示はフェーズ4に置く方が参照しやすいと判断した。この判断は再検討の余地がある
  • 調査根拠は research/phase4-standard/136-business-risk-assessment.md に記録した
  • 未確認事項として、ISO 31000 と COSO ERM の本文、HM Treasury の楽観バイアス補正率の適用条件、日本企業の投資決裁の記載事項の実態がある