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ADR-0036: 工程ゲートの判定は記録の作成をもって成立させ、語彙を2値に限る

採用(2026-08-13)

案件 P-001 で、G-2(要件合意)の判定基準5点がすべて充足しているにもかかわらず、「どうすればゲートが閉じるのか」が誰にも分からず工程が止まりました(#223)。

判定材料は揃い、レビューも済み、Issue も閉じられていました。存在しなかったのは判定記録だけです。この状態が「通過」なのか「未判定」なのかを、標準から判定できません。

規定と実行層の向きが逆転していた

Section titled “規定と実行層の向きが逆転していた”

第4章のゲート運用の共通ルールは「記録が残る」とだけ定めています。これは判定の成立要件とも、判定後の事務とも読めます。

一方で、準拠テンプレートには gate-record スキルとテンプレ4 ゲート判定記録があり、記録の様式も「結果: 通過 / 差し戻し」という語彙も、そちらに書かれています。

項目 標準本文 準拠テンプレート
ゲートを閉じる手順 無い gate-record スキルにある
判定の語彙 会議体の4値(3.7.3)のみ テンプレ4 が2値を規定している

ADR-0010は「本章が判定基準の正本」という向きを定めています。判定手続については、この向きが成立していません。実行層のテンプレートが事実上の正本になっていました。

これは#216で確定した「規定はあるが実行層へ降りていない」の逆向きの破れです。実装マークの仕組みは規定から降ろし先への一方向しか見ておらず、この逆流を検出できませんでした。

判定の語彙が工程ゲートに無い

Section titled “判定の語彙が工程ゲートに無い”

第3章 3.7.3 は判定の4値(継続 / 中止 / 保留 / 差し戻し)を定めますが、主語は「すべての会議体は」です。工程ゲートは会議体ではありません。判定者は1人であり、判定会議を開かないためです。

3.7.4 の B-2 ステアリングコミッティは、決定しない事項として「工程ゲート(G-1〜G-8)の判定」を明記しています。中止と保留は投資の継続可否であり、ステージ移行ゲート(SG)の領分です。4値を工程ゲートへ持ち込む設計にはなっていません。

しかし工程ゲートの語彙が本文にないため、案件からは「どちらを使うのか不明」と見えます。

「条件付き」を求める要求が上がっている

Section titled “「条件付き」を求める要求が上がっている”

P-001 の事業決裁者から、次の意見が寄せられました。

3.7.3 の4値には「差し戻し」と「保留」はあるが、「条件を付して先へ進める」がない。実務では最も使う判定である

具体例として、ADR-0004(JWT クレーム契約)が未執筆のまま F-003 の受入基準がそれに依存している状態が挙げられ、「ADR-0004 の執筆を条件として G-2 を通す」が最も妥当だが語彙がない、とされました。

この事例を精査すると、条件付きの語彙は必要ありません。G-2 の判定基準5点はすべて充足しています。ADR-0004 は G-3(技術設計判断)および G-4(機能仕様承認)の材料であり、G-2 の判定基準には含まれません。当該ゲートの判定基準に含まれないものを、当該ゲートの判定へ持ち込んでいます。

第3章 3.7.5 は「会議体に持ち込んではならない事項」を定めていますが、工程ゲートについて同じ規定がありません。欠けているのは条件付きの語彙ではなく、判定の範囲の規定です。

決定1: 判定記録の作成をもって判定の成立とする

Section titled “決定1: 判定記録の作成をもって判定の成立とする”

工程ゲートの判定は、判定記録(第6章 テンプレ4)の作成をもって成立します。記録の無い状態は未判定として扱います。

Issue のクローズ、PR のマージ、ラベルの遷移は、いずれも判定の成立要件ではありません。判定の成立に伴う事務です。

理由は、記録がなければ判定の存在そのものが自己申告になるためです。ADR-0035が自己申告による判定を排したのと同じ理由によります。

決定2: 工程ゲートの判定の語彙を2値とする

Section titled “決定2: 工程ゲートの判定の語彙を2値とする”

工程ゲートの判定は「通過」または「差し戻し」のいずれかとします。中止と保留を用いません。

中止と保留は投資の継続可否であり、ステージ移行ゲート(SG)が判断します。工程ゲートの問いは「この成果物を次工程へ進めてよいか」だけです。

第3章 3.7.3 の4値は会議体の語彙であり、工程ゲートへ適用しません。

決定3: 「条件付き通過」を設けない

Section titled “決定3: 「条件付き通過」を設けない”

条件を付して先へ進める手続は、第7章 7.3 の例外承認です。新しい判定値を設けません。

7.3 は次の5点を要求します。この5点が「条件」の実装にあたります。

  • 例外承認の権限を持つ者による記名の承認
  • 満たさない基準の項目番号と理由の記録
  • 想定される影響と、顕在化した場合の対処の記録
  • 回収の期限と回収責任者の設定、技術負債台帳への登録
  • 回収が完了するまでの継続的な報告

新しい判定値を設けない理由は2つあります。

第一に、7.3・7.10(前提の受容)に続く3つ目の経路になります。同じ事象に3つの手続が並ぶと、最も緩い経路が選ばれます。

第二に、「条件付き通過」は素通しの正規経路になります。7.3 は回収の期限と責任者を要求しますが、判定値として与えると、その要求を伴わない通過が生まれます。本標準の一文「決められた場所では必ず人間が触る」が最も壊れやすい箇所です。

決定4: 工程ゲートの判定は当該ゲートの判定基準のみで行う

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判定者は、当該ゲートの判定基準および全ゲート共通の通過条件だけを評価します。次工程の材料が未完成であることを、当該ゲートの差し戻し理由にしてはなりません。

当該ゲートの判定基準を満たさないまま進める場合に限り、7.3 の例外承認を用います。

案 却下の理由
「条件付き通過」を第5の判定値として新設する 決定3 のとおり。回収の要求を伴わない通過の経路が生まれる
3.7.3 の4値を工程ゲートへ拡張する 中止・保留は投資判断であり、B-2 が「工程ゲートの判定は決定しない」と定める構成と衝突する
Issue のクローズをもって判定の成立とする 案件の課題管理ツールに依存する。ツールを変えると判定の成立要件が変わる
標準を変更せず、テンプレ4 を判定手続の正本と認める ADR-0010 の向きが逆転したままになる。テンプレートは案件が改変できるため、統制の根拠にならない
判定記録の作成を事後の事務のままとする 記録の無い判定を検出できない。P-001 の状態が再発する
  • 第4章の共通ルール4 を、成立要件として書き直した。「判定の成立」「判定の語彙」「判定の範囲」の3節を新設した
  • 第7章 7.3 に、条件を付して進める手続がここであることを明示し、第4章から相互参照した
  • 第5章 Label Mailbox に、判定の成立とラベル遷移の関係を1節加えた。ラベルは増やしていない
  • 準拠テンプレートのテンプレ4 と gate-record スキルを、実装マークの降ろし先として登録した
  • 実装マークの規約に、逆流を検出できない限界を追記した