スクラム(Scrum)
既存プロセスの体系 / 種別: ライフサイクルプロセス(開発の全工程)
複雑な問題に対し、固定長の反復(スプリント)ごとに「検査と適応」を繰り返して価値あるプロダクトを届ける軽量フレームワーク
ひとことで言うと: 1か月以内の固定サイクルで「作って、見せて、直す」を繰り返す進め方。承認ゲートの代わりに、毎回の検査と適応で品質と方向を保つ
全体マップ(第1階層)
各フェーズをクリックすると、フェーズ内のワークフロー(第2階層)へ移動します。
graph LR ph0["スプリント"] click ph0 "/process-compass/processes/scrum/sprint/" "スプリントの詳細へ"
目的と成果
目的(purpose): 複雑な問題に対応する適応型の解決策を通じて、人々・チーム・組織が価値を生み出すことを支援する(スクラムガイド2020)
成果(outcomes):
- スプリントごとに「完成の定義」を満たした利用可能なインクリメントが少なくとも1つ生まれている
- プロダクトゴールに向けた進捗が透明化されている
- 検査の結果がプロダクトバックログとプロセスに反映されている
原典: Ken Schwaber / Jeff Sutherland(1995年 OOPSLA 発表)。原典はスクラムガイド(最新 2020年版)
ISO/IEC/IEEE 12207 対応: 主に「テクニカルマネジメント(軽量な反復で代替。合意プロセス群・組織プロセス群は意図的に対象外)」プロセス群をカバー
ロール
| ロール | 責任 | 日本の現場での実態 |
|---|---|---|
| プロダクトオーナー | プロダクトの価値最大化に対する結果責任。プロダクトゴールの策定、バックログの内容・並び順の単独決定(1人の人間であり委員会ではない) | 事業部門の管理職が兼務して多忙となり、イベント欠席・バックログ放置・意思決定遅延に陥る例が定番の課題 |
| スクラムマスター | スクラム確立への結果責任を持つ「真のリーダー」。チーム・PO・組織の支援役であり管理者ではない | 受託開発ではベンダー側が選任する形が IPA モデル契約でも想定される。PO との兼任は利害相反のため不適 |
| 開発者 | スプリントバックログの作成、完成の定義に基づく品質の作り込み、日々の計画適応。職能横断で肩書を分けない | 複数チーム・複数案件の掛け持ちによる集中の欠如が課題として指摘される |
ゲート(決裁・レビュー)
| ゲート | 種別 | Deliverables | 判定基準 | 判定者 | 判定結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| スプリントレビュー(検査) ※原典は「リリースのゲートと見なしてはならない」と明文で禁止。ただし日本の受託開発では事実上の検収イベント化が起きがち | 検査と適応 | インクリメント / プロダクトゴールへの進捗 | 経験的な検査(承認基準ではない) | スクラムチーム+ステークホルダー(協働) | プロダクトバックログの適応 |
| 完成の定義(DoD) | 検査と適応 | スプリント内の全作業 | DoD に列挙された品質基準(組織標準があれば最低限それに従う) | 開発者(自己判定) | インクリメントとして成立 / プロダクトバックログへ差し戻し |
| スプリント中止 | 決裁(Go/Kill) | スプリントゴールの現状 | スプリントゴールが陳腐化したか | プロダクトオーナー(唯一の Kill 権限) | 継続 / 中止 |
| リリース判断 | 決裁(Go/Kill) | インクリメント | プロダクト価値(レビュー通過は条件ではない) | プロダクトオーナー(任意のタイミング) | リリース / 保留 |
成果物(information items)
| 成果物 | 作成者 | 説明 |
|---|---|---|
| プロダクトバックログ | プロダクトオーナー | 唯一の作業源。コミットメントはプロダクトゴール(一度に追うのは1つ) |
| スプリントバックログ | 開発者 | スプリントゴール+選択アイテム+実行計画。開発者による開発者のための計画 |
| インクリメント | 開発者 | 完成の定義(DoD)を満たした利用可能な成果。DoD を満たさない作業はインクリメントと呼べない |
建前と実運用(日本の現場)
- ウォーターフォールの品質ゲートを接ぎ木した「ハイブリッド開発」が広く実践される(全体計画・要件確定・受入はWF型決裁、中間の実装のみ反復)
- 開発は速くてもリリース前の社内決裁がボトルネックになり「リリースは遅い」という乖離が起きる
- 品質保証部門による組織上独立した検証がスプリント外から関与するモデルが提案されており、「品質は開発者が DoD で内製する」原典との明確な差分になっている
- 受託構造では IPA モデル契約(準委任前提)により PO=発注側 / SM+開発者=ベンダー側と、会社境界がロール境界に重なる
フェーズ一覧(第2階層へ)
- スプリント — 全イベントの入れ物となる1か月以内の固定長サイクル。終了直後に次のスプリントが始まり、隙間の工程(安定化・承認待ち)は存在しない
参考文献
- スクラムガイド2020(公式)
- スクラムガイド2020 日本語版 PDF
- IPA 情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)
- 一次調査メモ(リポジトリ内 research/phase1/20260709-scrum.md に全出典)