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ピットイン方式参照モデル

フェーズ4: AI協調型ソフトウェア開発プロセス標準/ 本ページは本標準が規定する構造の機械可読表現です

フェーズ1〜3の分析を踏まえて本プロジェクトが設計した提案プロセス。外側は日本の決裁文化と整合する事業ゲート、内側はAIと人が高速で回す協調ループの二層構造で、5つのギャップへの打ち手を構造に織り込んだ参照モデル

ひとことで言うと: 外側は日本の決裁文化に合わせた節目のゲート、内側はAIと人が高速で回す実装ループ。技術の判断と事業の決裁を分け、決める人を1人にし、作った本人以外がレビューする——この4つの原則で「AIは速いが承認で詰まる」を防ぐ

全体マップ(第1階層)

各フェーズをクリックすると、フェーズ内のワークフロー(第2階層)へ移動します。

graph LR
  ph0["企画・立ち上げ"]
  ph1["要件・仕様定義"]
  ph0 -->|"企画承認"| ph1
  ph2["反復構築"]
  ph1 -->|"要件合意 / 技術設計判断"| ph2
  ph3["リリース準備"]
  ph2 -->|"機能仕様承認(反復内) / 自動検証(CI) / 独立レビュー"| ph3
  ph4["運用・改善"]
  ph3 -->|"出荷判定 / リリース決裁"| ph4
  click ph0 "/process-compass/phase4-process-design/process-model/kickoff/" "企画・立ち上げの詳細へ"
  click ph1 "/process-compass/phase4-process-design/process-model/requirements/" "要件・仕様定義の詳細へ"
  click ph2 "/process-compass/phase4-process-design/process-model/construction/" "反復構築の詳細へ"
  click ph3 "/process-compass/phase4-process-design/process-model/ship/" "リリース準備の詳細へ"
  click ph4 "/process-compass/phase4-process-design/process-model/operate/" "運用・改善の詳細へ"

目的と成果

目的(purpose): 生成AIの生産性と日本企業の統制(品質保証・決裁・検収)を両立させ、企業の品質管理部門・プロセス部門へ提案・承認可能な形で AI 協調開発を運用できるようにする

成果(outcomes):

  • AI生成の速度を殺さずに、すべての成果物に単一の人間の責任者が紐づいている
  • 技術判断と事業決裁が分離され、承認滞留が構造的に抑制されている
  • コア機能を人が理解し続ける状態が作業として維持されている(事業継続性)
  • 暗黙知がコンテキスト基盤に蓄積され、チケットごとの明文化負担が減っていく

原典: Process Compass フェーズ4(2026)。ウォーターフォールの工程ゲート、スクラムの反復、SDD の人間承認ゲート、AIDLC の AI 協調、GitHub 式独立レビュー、日本の出荷判定制度を意図的に組み合わせた設計

ISO/IEC/IEEE 12207 対応: 主に「合意〜組織〜テクニカルマネジメント〜テクニカルを横断(統合モデルのため)。特に意思決定管理と品質保証の再設計が中心」プロセス群をカバー

ロール

ロール責任日本の現場での実態
価値責任者(Value Owner)What/Why の決定と価値の説明責任を単独で持つ。要件合意・仕様承認の判定者。委譲しても結果責任は残る「1つの成果物に責任者は1人」の原則(ギャップG2対応)。事前の根回し・非同期コメントは歓迎するが、判定は単独で行い合議体にしない
技術判断者(Tech Lead)アーキテクチャ・技術選定・技術的トレードオフの判定を単独で持つ。技術設計ゲートの判定者職位ではなく技術力量で任命する(ギャップG3対応)。事業決裁者は技術判断に関与しない
開発者(検証者)AI生成物の検証、挙動の理解、実装の細部判断。コア機能では設計レベルまで読み解き判断記録を残す役割の重心が「書き手」から「検証者・理解の維持者」へ移る。検証は承認の儀式でなく理解を保つための読み込み
AIエージェント仕様の起案支援、実装、テスト生成、ドキュメント生成、負債候補の検出。席の担い手として実行(R)を担う。提案はするが、判定と承認はしない結果責任(A)はAIでなく、席ごとの責任者(記名の自然人。席ごとに1名)が負う。AIの確認は検出の層であり、承認として扱わない
独立レビュア作成を指示した本人とは別の人間として PR をレビューし、仕様との一致と理解可能性を確認する作成を指示した本人の承認は、独立した人の確認に数えない。ブランチ保護は最後に push した本人の承認を止め、PR の作成者が AI・bot の場合に残る指示者の承認は出荷の証跡の集約が数えない(第3章 3.5 の2つの層)。既存のレビュー文化と整合し、QA部門が担ってもよい。ただし G-6 を第三者検証とは呼ばない(附属書D)
品質保証(出荷判定者)開発ラインの外の人として出荷判定を行い署名する。プロセス実行記録と品質エビデンスの確認が任務(再テストではない)既存のQA部門が担う席・判定者・時点は変えない。署名の意味は改める(出荷基準の充足と、記録と保証の開示の完備の確認。出荷判定の規程の改定を要する)。判定を「記録の確認」に限定して滞留を防ぐ
事業決裁者予算・スコープ・リリース可否という事業判断のみを行う。技術判断には関与しない既存の決裁権限規程どおりの職位でよい(制度を変えない)。関与を事業判断に限定することで専門性の乖離(G3)を無害化する
コンテキストオーナー恒久層コンテキスト(規約・用語・判断基準・判断記録)の保守と正しさに責任を持つコンテキスト基盤の要件R5。オーナー不在だと文脈が陳腐化しAIの品質が劣化する
AI維持管理者(AI Maintainer)エージェント指示資産の一貫性と鮮度に責任を持つ。矛盾の除去・統合・削除の権限を単独で持ち、エージェントが用いる外部ツールの採用可否を承認する追加の権限を絞るのではなく削除の権限を集約する。追加を制限すると共有されない個人設定が増える
AI運用担当者(AIOps)全社のAI実行基盤(モデル接続・実行予算・セキュリティ統制)の可用性と適合性に責任を持つ。開発組織へは規程ではなく実行環境として統制を届ける案件の外側に置く。AI維持管理者との兼務は禁止(案件の都合で全社統制が緩むため)

ゲート(決裁・レビュー)

ゲート種別Deliverables判定基準判定者判定結果
SG-0 探索完了(ステージ移行) ※既存の投資決裁制度に載せる。判断は go / hold / kill の三択とし、判断しないまま継続する状態を作らない決裁(Go/Kill)検証結果報告 / 事業仮説の更新 / 技術的実現性の評価 / 意思決定体制図(D-0)事業仮説が実証データで支持されている / 技術的実現性が確認されている / 次ステージの投資規模と体制が示されているステアリングコミッティ(B-2)S1へ移行 / 継続検証 / 中止
SG-1 価値確立完了(ステージ移行・部門間移管) ※部門間移管を伴う場合、移管は文書の受け渡しでは完了しない。受入側の再構成完了をもって成立する決裁(Go/Kill)利用実績と価値の実証データ / アーキテクチャ設計と判断記録 / 恒久層コンテキスト / 移管記録実利用者における価値が実証されている / 拡大に耐えるアーキテクチャが確定している / 受入部門が要求を自らの言葉で再構成できているステアリングコミッティ(B-2)および受入部門の責任者S2へ移行 / 継続 / 中止
SG-2 スケール完了(定常運用へ移行) ※このゲートを設けない場合、プロジェクト体制のまま運用が続き、負債の返却主体が消える決裁(Go/Kill)運用実績 / 運用体制と引き継ぎ文書 / 技術負債台帳と返却計画対象利用者層に対する品質基準を満たしている / 運用体制が定常運用として成立している / 受容した負債の返却計画が承認されている事業決裁者および運用責任者定常運用へ移行 / 改善継続
G-1 企画承認 ※既存の稟議・決裁制度をそのまま使う(ここは変えない)。頻度が低いゲートなので多段決裁の遅さを許容できる決裁(Go/Kill)意思決定・エスカレーション体制図(D-0。承認済みであることが審議開始の前提条件) / AIエージェント安全リスクアセスメント表(適用条件に該当する案件のみ。審議開始の前提条件) / 企画書(事業意図) / コンテキスト基盤の整備計画と予算投資対効果が事業基準を満たす / リスクと受容方針が明示されている / コンテキスト基盤の初期整備コストが予算に含まれる / 指標の閾値と予算区分が合意され記録されている事業決裁者(決裁権限規程どおりの職位)承認 / 差し戻し
G-2 要件合意 ※判定は単独(合議体にしない=G2対応)。関係者の意見は判定前の非同期コメントで集める(根回しの構造化)決裁(Go/Kill)機能仕様書(受入基準付き) / 更新済みコンテキスト基盤(案件層)受入基準が検証可能な形式で書かれている / 曖昧語が残っていない / 暗黙の前提が案件層コンテキストに登録済み / スコープ外事項が明記されている / 合意した範囲がスコープ3層へ割り当てられている価値責任者(単独。目安48時間以内に判定)合意 / 差し戻し
G-3 技術設計判断 ※事業決裁(予算)と完全に分離する(G3対応)。技術判断に決裁階層を通さない決裁(Go/Kill)アーキテクチャ設計・技術選定案(AI生成+人レビュー済み) / 判断記録(ADR)案非機能要件の充足見込みが示されている / 既存資産・コンテキスト基盤と整合している / 選択の可逆性が評価されている / 代替案が最低1つ比較されている / 事業影響が観測可能な事象で記述されている技術判断者(単独。目安48時間以内に判定)承認 / 代替案の要求
G-4 機能仕様承認(反復内) ※SDD 式の人間承認ゲート。ここを飛ばすと vibe coding 化する(統制強度の要)決裁(Go/Kill)機能単位の仕様(AI起案) / 実装計画(タスク分解)機能仕様に検証可能な受入基準が含まれる / タスク分解の粒度が1タスク=1レビュー単位 / 対象機能のコア/非コア指定が明示されている / 各タスクの規模が分割基準の範囲内である / 合意した範囲の内か外かの判定が記入されている価値責任者(または明示的に委譲された機能責任者。委譲しても結果責任は価値責任者に残る)承認して実装へ / 修正
G-5 自動検証(CI) ※合意済みルールはすべて機械化してここに載せる(人の目を通さない)。人間の検証帯域を判断業務に温存するための設計検査と適応コード+テスト一式全テストが GREEN / 静的解析・脆弱性スキャンの重大指摘 / テストカバレッジ / 曖昧語チェック(仕様変更を含むPRの場合) / 依存関係のライセンス検査 / 文脈ファイルの形式検査 / 秘匿情報の混入検査 / 依存関係の追加・更新の識別CI(機械判定)通過 / 差し戻し(マージ不可)
G-6 独立レビュー ※日本のレビュー文化をAI時代の統制として再利用する。G-6 は同じ開発ラインの別の人による確認であり、第三者レビューとは呼ばない。レビューの目的は儀式でなく「人間側の理解の維持」(BCP)決裁(Go/Kill)PR(コード・テスト・判断記録)仕様(受入基準)と実装が一致している / レビュアが挙動を自分の言葉で説明できる / (コア機能のみ)設計意図の記録が完備 / レビュアが作成の指示者本人でない / (依存の追加・更新を含む場合)追加の必要性を確認した独立レビュア(作成指示者本人の承認は数えない。ブランチ保護と出荷の証跡の集約の2つの層で止める)承認 / 差し戻し
G-7 出荷判定 ※既存の出荷判定制度を活かす。判定は「記録と基準の突合」に限定し、ここで再テスト・再レビューを始めない(滞留防止=G5対応)決裁(Go/Kill)品質レポート / 技術負債台帳 / 全ゲート通過記録計画したテストの消化率 / 未解決の欠陥 / 受容した負債の台帳記録 / 運用引き継ぎ文書 / 全ゲートの通過記録 / AI 品質指標の確認 / (安全関連ソフトウェアのみ)安全適合性の検証記録 / 知財潔白性の検査記録 / 保証の開示の完備品質保証(開発ラインの外の人。署名する)出荷可 / 出荷不可
G-8 リリース決裁 ※技術判定の通過が前提なので、ここは純粋な事業判断のみ。目安48時間以内。技術品質を蒸し返さないことを規程に明記する決裁(Go/Kill)出荷判定結果 / 事業影響評価出荷判定(G-7)を通過している / 事業リスクの受容判断事業決裁者Go / Hold

成果物(information items)

成果物作成者説明
意思決定・エスカレーション体制図(D-0)価値責任者(Value Owner)決定の権限・権限境界(トレランス)・平常時と障害時のエスカレーション経路を1文書で確定させる。案件で最初に作る成果物であり、企画承認ゲートの前提条件
AIエージェント安全リスクアセスメント表技術判断者(Tech Lead)危険源の同定・リスクの見積り・3段階のリスク低減策・残留リスクの受容を記録する。適用条件に該当する案件で企画承認ゲートの前提条件となる
企画書(事業意図)価値責任者(Value Owner)目的・価値仮説・概算予算・リスク。企画承認ゲートの入力
コンテキスト基盤(恒久層・案件層)コンテキストオーナー規約・設計標準・ドメイン用語・判断基準。AIと新規参加者への共通文脈。継続的に更新される
機能仕様書(検証可能な受入基準付き)AIエージェントAI が起案し人が確定する。受入基準は検証可能な形式(例: EARS 記法)で書き、曖昧語を残さない
実装計画(タスク分解)AIエージェントAI がタスク分解・依存関係・並列可否を生成し、人が承認する
検証済みインクリメント(コード+テスト)AIエージェントAI が生成し、CI と人の検証・独立レビューを通過したもの
判断記録(ADR)技術判断者(Tech Lead)設計判断・技術選定・リスク受容の理由。コア機能では必須。コンテキスト基盤へ還流する
品質レポート品質保証(出荷判定者)テスト消化率・欠陥状況・ゲート通過記録。出荷判定の入力。AIが生成しQAが確認する
技術負債台帳開発者(検証者)生成過程で検出・受容した負債の記録。返却計画とセットで管理し、運用フェーズで計画的に返す

暗黙の前提条件(これが崩れると成立しない)

  • 価値責任者・技術判断者に、名目でなく実際の決定権が委譲されている(組織がその決定を尊重する)
  • CI 基盤(自動テスト・静的解析・脆弱性スキャン)が整備されている(g-ci の前提)
  • 独立レビューを成立させる体制がある(作成を指示した者と別の人が確認する。2名で成立する)。出荷判定者まで分ける3者の兼務禁止は3名以上で成立し、3名未満では出荷判定の兼務を逸脱として表示する
  • コンテキスト基盤の初期整備コストが企画時に予算化されている(明文化はただではない)

アンチパターン(建前 vs 実態)

ゲートの合議化

建前(あるべき姿)各ゲートは単独の判定者が期限内に判定し、関係者の意見は判定前の非同期コメントで集める
実態判定が会議体になり、全員の合意を待って滞留する
なぜ起きるか責任分散文化の慣性。単独判定への心理的抵抗
弊害ギャップG5(承認滞留)の再発。AIの速度が意味を失う

独立レビューの形骸化

建前(あるべき姿)レビュアが挙動を自分の言葉で説明できる状態まで読み込む
実態差分を眺めて即承認する(rubber stamp)
なぜ起きるかレビュー量が増え、儀式として処理される
弊害人間側の理解が失われ、事業継続性(BCP)が崩れる

コア指定のインフレ / ゼロ化

建前(あるべき姿)事業上致命的な機能だけをコア指定し、理解維持コストを集中させる
実態全部コア指定して理解維持が破綻するか、全部非コアにして BCP が崩壊する
なぜ起きるか線引きの判断を避け、一律にする方が楽だから
弊害理解維持が形骸化するか、障害時に誰も直せなくなる

コンテキスト基盤の放置

建前(あるべき姿)オーナーが保守し、運用の学びが書き戻され続ける
実態初期整備だけで放置され、実態と乖離した文脈をAIが参照し続ける
なぜ起きるかオーナー不在(責任の割り当てを設計しなかった)
弊害AI生成物の品質が静かに劣化し、原因が特定しにくい

建前と実運用(日本の現場)

  • 既存制度を壊さない設計を意図している。稟議・決裁権限規程(企画承認・リリース決裁)と、出荷判定の席・判定者・時点は変えず、その間に AI 協調ループを挟む。出荷判定者の署名の意味と、リリース決裁での残存リスクの受容の記名は改める(出荷判定の規程の改定を要する)
  • 変えるのは4点。(1)技術判断を決裁階層から分離して単独判定者に委ねる、(2)ゲート判定を合議でなく「単独判定+事前の非同期コメント」にする、(3)出荷判定者の署名の意味を定め、残存リスクの受容を事業決裁者の記名へ置く、(4)トップマネジメントが品質保証の方針と受容の基準を記名する。3点目は出荷判定の規程の改定を、4点目はトップマネジメントの記名を要する。この4点が既存文化との最大の交渉点になる
  • 独立レビュー・出荷判定という日本の検証文化は、AI時代にはむしろ統制上の資産になる(生成AIは人が承認し責任を持つ構造を要求するため)

フェーズ一覧(第2階層へ)

  • 企画・立ち上げ — 事業意図を言語化し、AIと人の共通文脈(コンテキスト基盤)を整備する。ここでの明文化投資が以降の全フェーズの速度を決める
  • 要件・仕様定義 — AIの問いを人が検証する協働セッションで仕様を固め、受入基準を検証可能な形式にする。技術設計判断もここで行う(事業決裁とは分離)
  • 反復構築 — 機能単位のAI協調サイクル(仕様承認 → AI実装 → 自動検証 → 独立レビュー)を数時間〜数日の粒度で反復する。3つのゲートはサイクルごとに機能単位で通過する
  • リリース準備 — 統合検証と品質エビデンスの整備。出荷判定(開発ラインの外の人)とリリース決裁(事業)を別の人が通過させる
  • 運用・改善 — 運用しながら負債を計画的に返し、学びをコンテキスト基盤へ書き戻す。プロセス自体も検査と適応の対象

参考文献