フェーズ5 概要 — プロセスの社会実装
フェーズ5は、フェーズ4のプロセス標準を実際の組織で動かすための段階です。
実装とは組織移行である
Section titled “実装とは組織移行である”本フェーズにおける「実装」は、道具を設定することではなく、組織の役割・手順・判断の仕方を移行させることを指します。設定作業は移行の一部にすぎません。
| 誤った理解 | 本フェーズの定義 |
|---|---|
| 設定ファイルとワークフローを整備すれば完了する | 設定は前提条件にすぎず、判断の仕方が変わって初めて完了する |
| 標準を配布し、周知すれば運用が始まる | 配布と周知だけでは運用は始まらない |
| 全社へ一斉に展開する | 限定された範囲で試し、結果を示してから広げる |
道具の設定だけを行った組織では、標準が形式的な提出物として扱われ、判断の実質は従来のまま残ります。
移行の全体像
Section titled “移行の全体像”移行を5段階に分け、段階の境界に判定ゲートを置きます。
graph LR
T0["T-0 準備<br>前提条件の充足"] --> T1["T-1 限定試行<br>1チーム・範囲を絞る"]
T1 --> G1{"TG-1"}
G1 --> T2["T-2 増分展開<br>隣接する数チーム"]
T2 --> G2{"TG-2"}
G2 --> T3["T-3 常態化<br>標準を既定の運用にする"]
T3 --> G3{"TG-3"}
G3 --> T4["T-4 自走<br>支援組織が撤退しても続く"]
G1 -.基準未達なら T-1 を継続.-> T1
| 段階 | 内容 | 主な成果物 |
|---|---|---|
| T-0 準備 | 導入の前提条件を評価し、不足を埋める | 前提条件の評価結果、移行計画 |
| T-1 限定試行 | 代表性のある案件で、範囲を絞って標準を適用する | 試行前チェックリスト、実測値 |
| T-2 増分展開 | 隣接する数チームへ広げる | 展開記録、支援の実施記録 |
| T-3 常態化 | 標準を既定の運用とし、逸脱の側を申請制にする | 規程への反映、教育の定着 |
| T-4 自走 | 支援組織が撤退しても維持される | 撤退の判定記録 |
各段階の手順、判定基準、チェックリスト、教育計画はプロセスの社会実装計画に規定します。
段階と実装リファレンスの対応
Section titled “段階と実装リファレンスの対応”| 段階 | 整備するリファレンス |
|---|---|
| T-0 | Git 戦略、PR 運用、CI/CD ゲート |
| T-1 | AI 実行環境、コンテキスト基盤 |
| T-2 | スタック型 PR、事前レビュー期間の自動化 |
| T-3 | 統合検証(非機能)、コンピューティング戦略 |
実装リファレンス一覧
Section titled “実装リファレンス一覧”各ページはコピーして使える設定例を含みます。参照モデルの最下層(個別作業)のページからも、対応するリファレンスへ直接リンクしています。
graph LR GS["Git 戦略<br>(ブランチ・コミット規約)"] --> PR["PR 運用<br>(作成〜マージ)"] PR --> CI["CI/CD ゲート<br>(G-5 の機械化)"] CI --> NF["統合検証<br>(非機能テスト)"] AI["AI 実行環境<br>(実行形態と権限)"] --> PR CB["コンテキスト基盤"] --> AI
| ページ | 実装するもの | 対応ゲート |
|---|---|---|
| プロセスの社会実装計画 | 移行段階・判定基準・教育計画・支援体制 | 移行全体 |
| Git 戦略 | ブランチモデル・命名語彙・ルールセット・コミットトレーラ | G-6 の機械強制 |
| PR 運用 | PR テンプレート・サイズ上限・Draft 運用・レビュー対応 | G-5 / G-6 の日常運用 |
| スタック型 PR | 依存する変更を積み上げる場合の運用 | G-6 の分割単位 |
| CI/CD ゲート | 必須チェック(gate-g5)・エビデンス自動集約 | G-5 / G-7 |
| 統合検証(非機能) | 性能・セキュリティ・運用シナリオの検証手順 | G-7 の入力 |
| AI 実行環境 | 権限設定(allow/deny/hooks)と実行形態 E1〜E3 | AI 協調ループ全体 |
| 事前レビュー期間の自動化 | 会議前の非同期レビューの自動化 | B-1〜B-4 の運用 |
| コンピューティング戦略 | CI リソースの確保と多段検査 | G-5 の運用コスト |
| コンテキスト基盤 | 恒久層・案件層の配置、CODEOWNERS、書き戻し | 文脈品質の維持 |
設定作業の順序
Section titled “設定作業の順序”T-0 と T-1 で行う設定作業の順序です。この順序は移行の順序ではありません。設定が終わった時点で移行は始まったばかりです。
- Git 戦略のルールセットと PR 運用のテンプレートを設定する(半日)
- CI ゲートへ既存のテスト・静的解析を gate-g5 として束ねる
- コンテキスト基盤の恒久層を書き始め、AI 実行環境を E1 から開始する
- 運用が回り始めたら実行形態を引き上げ、統合検証とエビデンス集約をリリースフローへ組み込む
既にコードと履歴があるリポジトリでも、適用の開始の定義は同じです(第1章 1.10)。適用の開始は、テーラリングの宣言を案件の記録に残した時点です。適用の開始の後は、テーラリングで導いた要求事項のすべてが同時に掛かります。ゲートを順に有効にしていく経過措置を、本標準は設けません。順序によらず動かせない要求事項の一覧も、置きません。開始の時点で満たしていない要求事項は、未達または記録の欠落として表示されます。
上の順序は設定作業の順序であり、適用の開始より前の準備に使えます。強制の前に、違反に当たる操作を観測するだけの期間を置く場合も、適用の開始より前に置きます。準拠テンプレートを既存のリポジトリへ持ち込むときに確かめた事実と定めは、準拠テンプレートリポジトリの「既存のリポジトリへ持ち込む」にあります。