ADR-0018: 前提の崩れを判定の停止ではなく受容の決裁で扱い、台帳を索引として設ける
採用(2026-08-06)
コンテキスト
Section titled “コンテキスト”本標準が置く前提について、崩れやすさを評価したうえで、崩れの発生を防ぎ、発生したことを検出して決裁の障壁とする仕組みを設けるかどうかが未検討であった。
フェーズ4の整備では前提の崩れに対する個別の対処を規定したが(D-0、レビュー SLA、欠陥注入、指示資産の3層など)、前提一覧を物差しとして充足状況を監視する構成にはなっていなかった。
調査により次を確認した。
- 14 の前提のうち、崩れやすいと断定できるのは3件のみ(A-T3 AIの自己検証、A-P3 検証能力、A-O3 検証キャパシティ)。9件は評価する材料が存在しない
- とくに A-O3 は既定で崩れている蓋然性が高い。1回のレビューで扱える変更量には上限があるという研究がある一方、AI 支援の変更は既にその上限付近に達している
- 安全に最も厳格な分野でも、要求を満たさないまま進むことを承認つきで許す制度が置かれている。禁止されているのは承認なしに進むことである
- 前提の管理を扱う既存の枠組みでは、前提・崩れの兆候・崩れた場合の行動を対で持つ。本標準に既にあるのは対処だけで、兆候と崩れた状態での進め方が欠けていた
あわせて、前提の記号 T1〜T4 と移行段階 T-0〜T-4 がハイフンの有無だけで区別されていることが判明した。日本語の文書では表記が揺れやすく、口頭では区別できない。
- 判定を機械的に停止しない。前提の崩れは可視化し、受容の決裁を求める。7.3 の例外承認の特殊形として扱う
- 例外を1つ設ける。安全リスク区分 SR3 以上に該当する工程では受容できない。これは本標準の判断で止めるのではなく、適用規格の要求により受容の範囲を超えるためである
- 充足状態を3区分とする(AC-0 充足 / AC-1 劣化 / AC-2 不成立)。二値では実態を表せない
- 劣化を観測された事象で定義する。判断や自己申告で定義しない
- 測る尺度が確立していない5件(A-P1・A-P2・A-P4・A-K1・A-K2)には判定条件を定めない。尺度がないまま条件を作ると、測れないものを測ったことにする運用が生まれる。尺度がないことを明記し、確立した時点で追加する
- 受容に3条件を課す。決裁者は当該の前提に責任を負う者とする(職位の上下で決めない)、有効期限と再評価の契機を付す、記録を台帳に残す
- 台帳(テンプレ10)は索引とし、対処の実体を書かない。既存の規定への参照のみとする
- リスク登録簿および判断記録(ADR)と統合しない。前提は成立しているかで評価し、リスクは確率と影響で評価する。ADR は採用後に本文を書き換えないが、前提の充足状態は変化する
- 新しいゲートを設けない。既存の G-1〜G-8 の通過条件に1項を加える
- 前提の記号を
A-T1〜A-K3へ改称する - 新しい記号は
AC-0/1/2の1系統のみとする。兆候と受容には個別の識別子を与えない。識別子は他文書から参照する必要が生じてから足す
検討した選択肢
Section titled “検討した選択肢”- 崩れの検出を決裁の障壁とする — 明快だが、崩れの申告が判定の停止に直結すると申告そのものが止まる。測れなくなることは、崩れたまま進むことより悪い。加えて A-O3・A-T3・A-P3 は多くの組織において既定で崩れており、運用の開始と同時に全件が例外になる
- 前提ごとに新しいゲートを設ける — 監視は確実になるが、ゲートの運用自体が A-O3(検証キャパシティ)を圧迫する。前提を監視する仕組みが、監視すべき前提を崩す
- 台帳に対処の内容も書く — 台帳だけを読めば済むが、規定の改訂が台帳へ伝わらず食い違う。ADR-0015で扱った矛盾と同じ構造になる
- リスク登録簿へ統合する — 台帳の数は減るが、評価の軸が異なる項目を同じ表へ並べることになり、どちらの判定も鈍る
- 全14件に判定条件を定める — 一覧としては整うが、尺度のない項目に条件を作ることになる。形式的に埋められた欄が、充足の根拠として扱われる
- 兆候と受容にも記号を与える — 参照は容易になるが、本標準は既に15系統以上の記号を持つ。個別参照の必要が生じていない段階での識別子の追加は、学習コストだけを増やす
- 前提の記号を維持し、移行段階の側を改称する — どちらでも衝突は解消する。ただし移行段階の側は参照数が多く、変更の影響が大きい
- 前提条件一覧の記号を
A-付きへ改称し、崩れやすさの評価表を追加した。証拠のある前提とない前提を区別して明示した - 第7章に 7.10「前提の劣化と受容」を新設した。既存の 7.10 を 7.11 へ繰り下げた
- 第6章にテンプレ10「前提の台帳」を追加した
- 第4章に「全ゲートに共通する通過条件」を追加した
- 記号の索引に
A-とAC-を追加し、混同しやすい対に2組を追加した phase3-gap-analysis/gap-map.mdの前提参照を改称に追随させた- 決定5 により、台帳で扱う前提は 6 件に限られる。残り8件は監視の対象外であり、この状態は尺度の確立によってのみ解消する
- A-O3 の変更行数の上限は、本標準が外部の実証から直接導けた数少ない値である。ただし当該の研究は2000年代の実務を対象としており、現在の開発様式への外挿は検証されていない。自組織の実測へ置き換える前提で記載した
- 調査根拠は
research/phase2/139-assumption-monitoring.mdに記録した - 未確認事項として、A-T4 の充足率の分布、A-P1・A-P2・A-P4 の実証、レビュー量の上限に関する研究の現代への外挿可能性がある