ADR-0032: 経営層へ提示する1枚を、新しい様式ではなく既存成果物からの投影として定義する
採用(2026-08-12)
コンテキスト
Section titled “コンテキスト”本標準と経営層・決裁ラインとの接続は、経営層側の手続を変更しない方針で設計されています。既存の稟議・決裁権限規程・出荷判定をそのまま用い、金額区分の境界額も定めません。導入の摩擦を最小にする戦略として有効です。
一方で、次の2点が未解決のまま残っていました。
1. 集約された様式が存在しない
Section titled “1. 集約された様式が存在しない”事業決裁者を「主な読者」に挙げている成果物は、テンプレ6 企画書の1件のみです。その様式は9つの節と5つの表で構成され、1枚に収まりません。テーラリングに現れる「1枚企画書」は語として存在するだけで、様式の定義を伴いません。
リーンキャンバスや事業計画書が実務で用いられている理由は、評価したい項目がひとまとまりで見えることにあります。本標準にはその器がありません。
2. 財務の提示について、標準と稟議が衝突する
Section titled “2. 財務の提示について、標準と稟議が衝突する”本標準は「1つの数字に判断が置き換わる」ことを3層で一貫して警戒しています。期待効果に単一の年額を要求せず、事業影響に金額での定量化を義務づけず、提案ツールから総合スコアと百分率を排しています。
しかし稟議は単一の数値を要求します。埋め方の規定がないため、現場は標準の外で数字を作ります。禁止が機能しないまま、二重の資料が生まれます。
- 経営層へ提示する1枚を、新しいテンプレートとして定義しない。既存成果物からの投影と位置づける。ADR-0016決定1 が新規テンプレートを作らない方針を定め、ADR-0010が正本の一元化を定めているため
- 投影に新しい記述を求めない。すべての項目に既存成果物の出所を対応づける。出所を持たない項目を投影に含めてはならない
- 投影を判定の対象にしない。ゲートおよびステージ移行ゲートの判定は、従来どおり正本に対して行う
- 稟議へ提示する数値は、期待効果の幅の下限値を用いる。上限値を提示に用いてはならない。企画書の期待効果欄は書き換えない
- 数値を提示する場合、算定根拠と効果が出ない条件を併記する。数値のみの提示を禁じる
- 提示の順序を、企画書の記述の順序と別に定める。企画書の6観点は書く順であり、決裁の読み順ではない
- 規定を附属書に置く。要求事項ではなく手引きとして扱う
検討した選択肢
Section titled “検討した選択肢”- テンプレ11 として新しい様式を追加する — 経営層向けの様式が正本として定義され、記入の指示も明確になる。しかし同じ情報が企画書と新様式の2箇所に正本として存在し、必ず片方が古くなる。ADR-0016 決定1 にも反する
- テンプレ6 を1枚に収まる分量へ縮める — 正本は増えない。しかし企画書は G-1 の判定基準4項目と欄を対応させた成果物であり、分量を削れば判定の入力が欠ける。読みやすさのために判定の材料を削る取り引きになる
- 「1枚企画書」の実体を定義する — テーラリングに既に語がある。しかし当該の語は S0 における簡略化の指示であり、経営層への提示とは目的が異なる。同じ語に2つの役割を負わせると、どちらの用途でも中途半端になる
- 投資回収期間・損益分岐点の欄を設ける — 決裁の実務に直接対応する。しかし単一の数字を作らせる欄であり、本標準が3層で一貫して排してきた形式である。ADR-0031決定6 でも同じ理由により市場規模の欄を採らなかった
- 幅の上限値を提示に用いる — 決裁は通りやすくなる。しかし需要予測の検証では過大な見積りが系統的に生じており、上限の提示はその偏りを制度として追認する。下限で決裁が通らない案件は、下限で通らないという事実こそが判断の材料である
- 数値の提示そのものを禁じる — 標準の思想には最も忠実である。しかし決裁制度が数値を要求する組織では、標準の外で数字が作られる。禁止が機能せず、統制の外に資料が生まれる状態は、規定された形式で数値を出す状態より悪い
- 本文の章として規定する — 遵守の対象が明確になる。しかし提示の作法は組織の決裁制度に依存し、本標準が要求事項として定められる範囲を超える
- 附属書G を新設する。附属書の番号は G まで伸びる
- 投影の項目はすべて既存成果物を出所とする。企画書・D-0・予算区分のいずれかを更新すると、投影も更新の対象になる
- 決定4 により、下限値では決裁を通せない案件が生じる。不具合ではなく、判断の材料として意図した結果である
- 決定3 により、投影に不備があってもゲートの判定は影響を受けない。投影は判定の記録ではない
- 決定6 により、企画書の6観点の順序は変わらない。提示の順序のみを附属書で定める
- 本 ADR は、経営層が集約された様式を評価するという前提に立つ。この前提は実証されていない